学校図書館と著作権

司書のおしごと

こんなメールをいただきました。
本のカバーをしおり等に加工して児童に配布することは、著作権は大丈夫でしょうか・・・という内容です。
他の学校でも本のカバーで色々なグッズを作って子どもたちにあげている様子を見ているので、あまり深く考えずに配布していました・・・。

著作権、最近色んな場所で聞くようになりましたね。
気をつけていることとしては、もし自分が著作者だったら、と考えて、嫌だなと思うことはやらないようにしているくらいでしょうか。

でも、そういえば、公共図書館では廃棄になった本や雑誌を市民に無償で譲渡しています。
学校で廃棄になった本のカバーを加工して配布することは、それと似ている気がします。
大きな公共図書館にはちゃんとした正規の司書の方がいらっしゃると思うので、著作権関係はきちんと調べた上でされていることだと思います。
そう思ったら問題ないような気がします・・・。

でも気になって、少し調べてみたら、以下の様な記述を見つけました。

「出版物に関する権利」の内容

譲渡権

複製された出版物を販売することなどにより公衆に提供する権利。海賊版を仕入れて販売する業者に対抗することができます。

出版者が、出版物原版を複製したものを公衆に提供できる権利のことです。複製しただけでは出版物は読者の手元に届かず、取次・書店を通して販売されて初めて読者に届くことになります。このときに働く権利が譲渡権です。ただ、譲渡権は、一旦適法な譲渡(売買)が行われれば、それ以降行われる譲渡については働きません。これを権利の「消尽」と言います。読者が購入した本を古書店に自由に売却できるのは、譲渡権が消尽しているためです。なお、譲渡権は権利の性質上、有体物にのみ働きます。

出典:「出版物に関する権利」の内容(出版広報センター)

つまり、学校図書館も公共図書館も、最初は購入している訳なので、その時に適法に譲渡されたものとして、その後の譲渡は自由、ということになるのかな、という感じです。
もちろん公共機関なので、販売して売上を懐に入れるのはダメですが、利用者に無償で提供するのであれば問題無い、と考えることができそうです。

また、学校現場においては著作物の使用がかなり許されている感じがあり、学校図書館もその流れで・・・という感じはあります。
迷った時には、以下の文章を読んで、照らし合わせてみるといいかもしれません。

学校等の教育機関で複製や公衆送信の利用行為が行われることによって、現実に市販物 の売れ行きが低下したり、将来における著作物の潜在的販路を阻害したりすることのないよう、十分留意する必要がある。

出典:改正著作権法第35条運用指針(令和 2(2020)年度版)(文化庁)

リモート授業などで著作権が話題になり、学校でも神経質になっている感じがあります。
でも、全国の学校が一つ一つ出版社に問い合わせをしていたら、出版社は大変だと思うのです。
なので、
①著作者の利益を損なうものではないこと、
②子供達が本に親しむためのものであること、
③無償であること、
の3点があれば、学校図書館においては、あまり恐れず図書を使ってよいのではないのかな、と個人的には思います。
もちろん、著作者、出版社さんから「困ります」みたいな表明があれば、するべきではないのですが。

著作権関係の専門家の方々、こんな感じのとらえ方で構わないでしょうか・・・。
メール下さった方もきっと、毎日の業務で不安に思っていらっしゃるのかな、と思います。
確実に「これ」と言えるものが探せたかどうかはわかりませんが・・・私自身、色々と考える機会になりました。
県立図書館など、大きな図書館に問い合わせてみると、もっと確かな答えが返ってくるかもしれません。

小さな学校図書館としては、著作権には配慮しつつ、でも、子どもたちが本に親しめるよう、あまり固く考えすぎないようにしていけたらいいかな、と思います。

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