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【設題】
図書館の組織の種類を挙げ、それぞれについて述べるとともに、文科省の「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」を読み、利用者から見て、これからの図書館組織はどうあるべきか、貴方自身の考え方を含め論じて下さい。
【解答】
1.図書館の組織の種類について
図書館の組織は主に以下に列挙する五つの種類の分けられる。
①「働き」(職能)から部門化された「職能別組織」
記録された知的文化財の収集、保管、そして提供という、図書館の機能の側面から部門化した組織で、総務部、收書部、整理部、奉仕部などのように、図書資料の流れに沿って分けられている。
この組織は日本国内の図書館組織としては最も多く、長所としては、管理コストや人件費が抑えられ、管理統制がやりやすい等がある。短所としては、専門家の育成ができにくいことや、利用者サービスが浅くなる、などが挙げられる。
②資料の主題から分けた「主題別組織」
資料の形態を問わず主題によって部門化し、それぞれの部門が選定、收書、整理、閲覧、貸出、参考業務を一元的に処理する組織のことを言う。
この組織の形態では、図書館員が専門主題に対して深く関与できるため、司書の育成が可能となり、利用者にとってもレベルの高い図書館サービスが受けられる。米国ではこの組織形態の図書館も多く、司書の地位も高いが、日本では大手大学の学部図書館や企業の専門図書館など少数である。管理経費が多くかかるのが問題であるのだが、本来の図書館サービスを考えると、この主題別組織をもっと取り入れる必要がある。
③利用者から分けた「利用者別組織」
この組織は利用者別に組織化を行うもので、大学図書館では、学部学生図書館、大学院図書館、研究者図書館がある。苦境図書館では、児童閲覧室、成人閲覧室、障害者閲覧室などがある。
④資料の形態別から分けた「資料別組織」
雑誌・新聞部門、逐次刊行物部門、参考図書部門等、資料形態別に組織化を行うおので、閲覧制度にのみこの形態を導入する図書館もある。
⑤それらを混合した「混合組織」
以上の四つの形態を複合的に組み合わせた組織で、日本の図書館はこの混合組織を取っていることが多い。機能別組織を中心にしながらも、雑誌・新聞系や視聴覚系、マイクロ資料系、AV資料系が独立し、資料の選定・発注・受け入れ・整理・提供までを、一元的に業務を処理する場合や、閲覧部門のみ主題別や利用者別、資料別に区分する図書館もある。
2.これからの図書館組織はどうあるべきか
書籍・資料の増加や電子化など、時代が急速に変化していく現代において、図書館の役割も変化してきている。今までのやり方では、図書館の持つ本来の役割を果たすのに難しい状況が出てきた。
2008年2月19日に発表された中央教育審議会答申で、「住民の身近にあって図書やその他の資料を収集、整理、保存し、その提供を通じて住民の個人的学習を支援するという役割に加え、特に近年は、地域が抱える課題の解決や医療・健康、福祉、法務などに関する情報や地域資料など、地域の実情に応じた情報提供サービスを行うことも求められている」(注1)とあり、これが図書館運営のガイドラインである「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」に反映されている。
こうした状況を踏まえ、近年重要な施策として注目されているのが、課題解決型図書館の構築と組織化である。公立図書館においても、企業支援や法律、健康、医療情報の提供など、新しいサービスに力を入れる所も出て来た。[1]
このような住民の実情に応じたサービスを考える場合、現状の問題点や要望を聞き入れ、それに対応できるシステムが重要である。住民に最初に接するのが、現場で働く図書館職員である。彼らが直面した問題への対応策や、より良いサービスのための改革などに、柔軟に対応できる組織作りが必要であると考える。
しかし行政主体の施設は組織が硬直しがちで、こういった「下からの」要望に対応するのが困難だったり、遅れがちである。教育基本法から始まった、いわば「上からの」構築であった図書館の組織を、現在の社会状況と利用者を鑑みて、「現場からの」必要に応じて組織を構築するべきだと思うが、果たして可能であろうか。
その打開策の一つとして、できることから変えていくという方法がある。平成21年度に出された報告書「今、図書館がやるべきこと!」の中で、静岡県立図書館の例が挙げられている。[2]他の図書館と同じように、ここでも非正規職員を多く抱えているが、彼らに研修を行い、管理的業務や専門的業務を担ってもらうと同時に、管理職や行政職の職員もカウンター業務をこなすという、いわば現場感覚を共有するシステムを作っている。
これは先に挙げた「下からの」必要をくみ取るのに効果があると考えられる。しかし、非常勤職員に負荷の掛かる業務を担わせるのであれば、それなりの待遇改善が必須で、それが成されないのであれば、彼らに負荷がかかりすぎるシステムになる恐れがある。そのため、現場職員の待遇改善を試みつつ、現場の感覚を運営に活かし、図書館サービスを常に改善していこうとする姿勢が重要になる。図書館は、組織があって図書館となるのではなく、今必要とされているサービスがあり、そのために存在する施設であるべきだと考える。
【参考文献】
(注1)中川 佳樹「図書館制度・経営論」近畿大学通信教育部 p7
[1]図書館をハブとしたネットワークの在り方に関する研究会「地域の情報ハブとしての図書館(課題解決型の図書館を目指して)」平成17年1月28日
http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/tosho/houkoku/05091401.htm
[2] (財)大阪府市町村振興協会 おおさか市町村職員研修研究センター 「今、図書館がやるべきこと!」視察先図書館の人材育成事例 ①静岡市立図書館p77
http://www.masse.or.jp/ikkrwebBrowse/material/files/group/4/kyodo20_ondanka.pdf
個人的な感想
これはちょっと難しかったです。
今まであまり考えていなかった分野のことで、図書館の置かれている現状なども、教科書を読んでびっくりした・・・という有様で。
指定管理に関しては、私自身、賛成不賛成の立場がわからないでいます。
でも、このレポートでは賛成の立場を取っています。
レポートを書くに当たっては、論旨がハッキリしていた方が良いはずなので、態度を決めて取りかかりました。
資格取得のためのレポートなので、自分の主張は少し脇に置き、勉強したことをまとめること、論点を絞ること、論文としてまとまっていることを重視・・・したのですが。
後半部分の論旨が弱いと言われてしまいました。(合格はいただきましたが)